ニュースの概要
人材・HR系の調査会社ロッツフルが実施した定点調査によると、20〜40代の会社員における直近半年間の副業実施率は46.7%となり、前回調査から7.4ポイント上昇した。副業からの月収が30万円以上に達した人の割合も19.3%まで増え、副業がもはや「お小遣い稼ぎ」ではなく、家計を支える収入源へと変化しつつある実態が浮かび上がった。一方で、副業経験者の64.9%が本業の勤務時間外でも依頼にすぐ対応しており、83.5%が時間外連絡への配慮を求めているという結果も示され、副業市場の拡大の裏側にある働き方の課題が改めて浮き彫りになった。
引用元: 副業実施率が46.7%に上昇、月30万円以上の副収入も約2割に拡大(SBI BITS / Jiji Press)
分析・見解
小遣い稼ぎから「第二の給与」への転換点
副業実施率が46.7%まで伸びたこと自体は、ここ数年の延長線上にある数字だ。しかし今回の調査で見逃せないのは「量」より「質」の変化である。副業月収30万円以上が19.3%に達したということは、本業の手取りに匹敵、あるいはそれを上回る副収入を得ている会社員が、約5人に1人の割合で存在することを意味する。副業はもはや家計の補助ではなく、本業と並ぶ「第二の給与」として機能し始めているとみてよい。
即レス文化が副業の現場にそのまま持ち込まれている
より本質的な論点は、稼働時間外の対応率の高さだ。副業経験者の64.9%が勤務時間外でも即座に対応しているという数字は、正社員雇用の「いつでも連絡が取れる」という労働慣行(=オンコール的な働き方)が、雇用契約のない副業の現場にまでそのまま持ち込まれていることを示す。本業であれば労働時間の管理や残業代の仕組みが一応機能するが、副業は業務委託契約であることが多く、時間外対応の多くは契約上「無償のサービス」として処理されやすい。83.5%が配慮を求めているという結果は、働き手の側がこの構造にすでに違和感を抱いている証拠といえる。
発注企業にとって即レス依存は見えないリスクになる
副業人材を活用する企業側の視点に立つと、この即レス依存は短期的には便利でも、中長期的には品質リスクになりかねない。即レスできる人材は本業が比較的裁量労働であるか、集中力を分散させて対応している可能性が高く、納品物の質や継続性にばらつきが出やすい。実際、クラウドソーシング各社の過去の調査でも、対応の早さと成果物の完成度は必ずしも比例しないことが繰り返し指摘されてきた。発注企業が「レスポンスの速さ」を暗黙の評価基準にしてしまうと、優秀だが時間外対応をしない人材を遠ざける逆選択が起きかねない。
副業人材の争奪戦は「条件提示」の巧拙で決まる
副業市場はすでに供給側、つまり働き手側の売り手市場に近づきつつある。月収30万円超を稼ぐ層が増えているということは、優秀な副業人材ほど複数の発注先から声がかかり、条件を選べる立場にあるということだ。今後は時給や単価だけでなく、「稼働時間外は対応不要」といった就業条件を明示できる企業ほど、質の高い人材を確保しやすくなる。本業の採用市場で起きてきた「働きやすさの可視化競争」が、副業・複業のマッチング市場にも波及し始めたと捉えるべき変化だ。
ビジネスへの影響
就業規則に時間外対応のルールを明記すべき段階に来た
副業を容認・推奨している企業は、本業側の就業規則や副業申請フローに「稼働時間外の連絡対応を求めない」旨を明記する段階に来ている。83.5%もの副業経験者が配慮を求めているという数字は、放置すれば優秀な人材の離脱や、過重労働による本業側のパフォーマンス低下に直結しかねないシグナルだ。人事部門は副業許可の可否だけでなく、「副業先からの連絡時間帯」まで申請項目に含めることを検討してよい。
副業人材を発注する側は単価より稼働条件で差別化する
業務委託で副業人材を活用する企業にとって、単価競争だけで人材を確保しようとする発想はすでに限界に近づいている。月収30万円超を稼ぐ副業人材が2割近くいる以上、価格で競り負ける企業は一定数出てくる。その代わりに「対応時間帯の明確化」「成果物ベースの評価」といった、働き手の負担を軽減する条件を前面に出すことで、価格以外の軸で選ばれる発注先になれる余地がある。
人的資本の情報開示にも時間外対応は関係してくる
上場企業であれば、人的資本経営の情報開示(=従業員の働き方や健康に関する情報公開)の観点からも、自社社員が副業先からの連絡にどう対応しているかは無視できないテーマになりつつある。本業の労働時間は適正でも、副業先での「見えない時間外労働」が本人の健康リスクとして蓄積していれば、それは広い意味で企業の人材マネジメントの死角になる。副業容認企業ほど、申請時に稼働実態を簡易的に把握する仕組みを持つ価値が増している。
