米国で副業人口が減る一方、継続者の月収は1,242ドルに 副業が「選別」される時代の読み方

米国で副業人口が減る一方、継続者の月収は1,242ドルに 副業が「選別」される時代の読み方のイメージ

ニュースの概要

米国の大手オンライン金融サービスLendingTreeが実施した副業調査によると、副業を持つ米国の消費者は全体の約3分の1にとどまった。前年は約4割、4年前は4割を超えていたため、副業をする人の割合は着実に下がっている。一方で、副業を続けている人の平均月収は1,242ドルへ上がり、過去最高水準となった。分野別では、配達、ライドシェア、ベビーシッター、ペットシッターといったオンデマンド型の仕事が最も多い。次いで、フリーランスや専門サービスが続く。副業をする人は減ったが、残った人はより多く稼いでいる。

引用元: 米国で副業人口は減少する一方、継続者の平均収入は過去最高水準に(GenZ NewZ)

分析・見解

参加者が減ったのに平均が上がる数字の読み方

平均月収が上がった理由は、二つ考えられる。一つは、稼げる人だけが残ったこと。もう一つは、仕事の単価が上がったことだ。前者は統計の世界で生存者バイアス(=残った人だけを見て全体を判断してしまう偏り)と呼ばれる。やめた人の収入は平均に入らない。だから「副業が儲かるようになった」と読むのは早い。

約3分の1という割合は、前年の約4割、4年前の4割超から下がり続けている。生活費の穴埋めで始めた人が、本業の収入回復で離れた面もあるだろう。副業は景気の安全網として増減する。この調査は、その波が引きつつある様子を映しているように見える。

配達や配車は入りやすいが、手取りの差が開きやすい

最も多いのは、配達、ライドシェア、ベビーシッター、ペットシッターなどのオンデマンド業務だ。登録すればすぐ始められる。しかし、入りやすい市場は競争も激しい。燃料代、車の維持費、保険料を引くと、手元に残る額は見た目より少ない。

一方、フリーランスや専門サービスは、最初の顧客を得るまでに時間がかかる。だが、いったん信頼を得れば単価が高く、時間あたりの収入は配達を上回りやすい。平均1,242ドルは、この二つの層が混ざった数字である。真ん中の人の収入(=中央値)が分からない限り、多くの人が同額を得ていると考えてはいけない。

小銭稼ぎから「小さな事業」への移行が始まっている

月1,242ドルを年に直すと約1万5,000ドルになる。米国の家賃の相当部分をまかなえる額だ。この規模になると、副業は「空き時間のお小遣い」ではなくなる。時間あたりの利益、客の獲得費用、税金の処理まで考える必要が出てくる。

参加者が減ったのは、この負担に気づいた人が増えたからかもしれない。思いつきで始めて数か月で挫折する人が減り、設計して続ける人が残る。私はこれを副業の「量から質への転換」と見る。日本でも同様の流れが起こる可能性は高い。

今後を左右するのは景気より、仕事の仕組みの変化

文章作成や翻訳、画像制作などの専門サービスは、生成AI(=文章や画像を自動で作る技術)の影響を受けやすい。単価が下がれば、フリーランス型の副業は選別がさらに進む。配達も、手数料の改定やアプリの配車ルールの変更ひとつで収益が動く。

副業人口の減少と収入の上昇が同時に続くなら、市場は「誰でも参加できる場」から「技能と運営力のある人の場」へ移る。数字の上昇に安心せず、収入の中身を見ることが大切だ。

ビジネスへの影響

副業の禁止より、申請と情報管理の整備が現実的

副業を持つ人が減っても、残った人の副業は本格的になっている。月に10万円を超える収入を得る社員が出れば、本業への集中度や就業時間の管理が問われる。禁止すれば隠れて続ける人が出るため、申請制にして、競業の有無、機密情報の扱い、1日の総労働時間を確認する形が現実的だ。日本では労働時間の通算が論点になるため、制度づくりは早いほど負担が小さい。

採用と評価では、副業の経験を成果として読む

専門サービス型の副業を続ける人は、顧客の獲得、見積もり、納期管理を自力でこなしている。これは社内でも通用する力である。面接では「何をしたか」だけでなく、「客をどう増やし、いくら稼いだか」を尋ねると、実力が見えやすい。評価面談でも、副業で得た学びを本業に還元する機会を設けたい。

副業向けサービスを持つ企業が見るべき指標

配達や仕事紹介の事業者にとって、登録者数の増加は成功の指標になりにくくなっている。見るべきは、3か月後と1年後の継続率、継続者の時間あたり収入、そして手数料への納得感だ。稼げる人を育てる研修や、経費を見える化する機能を整えた方が、長期の定着につながる。まず自社の副業ルールと指標を点検し、数字の裏にある中身を確認したい。

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